INTERVIEW

Sound and Beauty

音と美 vol.4ー「自分の中の美」を感じる 【後編】

両足院・副住職 伊藤東凌氏

2022年2月4日 ・ Written by CRYSTAL BEAUTÉ STAFF

ー音がもたらす美と安らぎを、すべての人にー

クリスタル・ボーテ・インタビューvol.4では、前回に引き続き、両足院・副住職の伊藤東凌さんに、「音と美」についてお話を伺いました。

※クリスタルボーテ・インタビュー音と美vol.3はこちら

■「美」に基づいた行動とは

今回のテーマでもある「美」についてお話しますと、私は、日常生活における人の行動にも、「美」を感じる瞬間があります。

たとえば、丁寧さ。誰かに何かを伝えるときに、傷つけないように言葉を選んだり、レストランで、サービスを受けたお客さんが店員をねぎらい、店員もまた、お客さんをねぎらったり。もちろん、人に対してだけでなく、植物を世話したり、仕事道具を丁寧に扱う姿は、美しいと感じますね。

また、他人に対して自分を開いている人には、感動しますし、美しいと思います。「開いた状態」というのは、たとえば、自分の過ちをしっかり認めて、しっかりと謝れるとか、嬉しいことを素直に喜べるとか、そういうことです。

人は、他人に対して、ともすれば閉じてしまうものです。それぞれ、自分を守るために、「ここまでは見せる」「ここからは見せない」という境界線があるのは、仕方がないとは思います。ただ、だからこそ、「ここまで開いてくれるんだ」「信頼してくれたんだ」と感じたときは、感動しますね。そして、こちらも相手を信頼して開くことができます。

そうそう、私にとって、「感動」も「信頼」も、「美」につながる大切なキーワードです。

■ご機嫌になって、応援しあえる社会へ

本来、だれもが心の中に「美の世界」をもっていると思います。とはいえ、日常の諸問題に追われると、美の感覚は、脇に置かれてしまうものです。たとえば、人が見ていないからゴミを投げ捨てるというのは、「美しさ」を欠いている状態。もし、私たちが、地球を汚(けが)すことの愚かさに気づかないまま行動し続ければ、地球は滅んでしまうのではないかとさえ感じています。

だからこそ、瞑想のような時間を作り、落ち着いて自分の中の「美の世界」を確かめることが大切になります。とはいっても、目を閉じるだけで、それをイメージできる人は少ないですね。多くの人は、ピンとこないでしょうし、「自分の中を見ましょう」と言うと、汚れた心に着目してしまったりします。

ですから、私は、「まずは身の回りで、自分が美しいと感じるものを見つけましょう」とお伝えしています。人によって、観葉植物だったり、鳥が飛ぶ姿であったり、音楽を聴くことであったり。自分の中で、どういうものに美しさを感じ、心が落ち着き穏やかにいられるのか。それを知って、毎日「美」とつながる時間が増えていくと、「穏やか」から一歩進んで、「ご機嫌」でいられます。

「ご機嫌」も「美」につながるキーワードですね。機嫌は人にとってもらったり、人に与えてもらうものではありません。自分の機嫌は自分でとれるようにならないと、美しさには通じません。

「空を見上げるだけで、ご機嫌になれる」、「これを食べているだけで、ご機嫌になれる」「この音楽を聴いただけで、ご機嫌になれる」。

このように、自分のご機嫌の設計図を、自分で描けるようになると、自分の可能性を見出せるようになります。自分の可能性を見出せるようになると、他人の可能性にも目を向けられるようになって、そこを応援しようと思えるのではないでしょうか。

一人ひとりが、自分の中の「美の世界」を思い出し、ご機嫌になることで、可能性を信じあえる社会、応援しあえる世界が実現できると信じています。

■一人ひとりが「美」を感じることが、地球を守る

最終的には、「美」というのは、全人類共通のスタンダードにするべき、最重要コンセプトのひとつだと考えています。この美しい惑星である地球に住まわせてもらっている私たちが、地球を守っていくために、行動の基準となるのが「美しさ」ではないでしょうか。

未来の生態系を守るために、議論が活発になってきたのはとても良いことです。個人的な意見では、最も環境にダメージを与えてしまうのは人間同士が同士がケンカすること。戦争は、なによりの地球破壊です。一人ひとりが、「美」とつながり、穏やかでいられれば、そう簡単にけんかにはなりません。ご機嫌な状態であれば、他人の失敗も許せるものです。自分に対する裏切りですら、「学ばせてもらいました。ありがとうございます」といえるかもしれません。

私は、日々、お寺の庭の手入れや掃除をしていますし、衣装や佇まいも含めて、できるだけ人の心に触れられるような、美しい景色を作ることを意識しています。美しさを感じられる場所であること。それが、セルフケアセンターであるお寺のあるべき姿だと考えているからです。

時代の変化に応じて、人の暮らし方や悩みのポイントも、常に変化しています。お寺自体も、新しいコンテンツを用意していきながら、同じ時代に生きる人々を、全体的にケアできる場所でありたいと考えています。

両足院 https://ryosokuin.com/
伊藤東凌_瞑想指導 https://twitter.com/toryo_ito


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